欧州車の偶像・ロードレースのサポートカー

 

欧州ブランドの魅せ方

2018年まで活動したUCI(国際自動車競技連合)ワールドチームの中で圧倒的な存在感を誇った「チーム・スカイ」(現在は「チーム・イネオス」)と提携していたジャガーによるコラボモデル。ハードトップに2台のエアロハンドルを備えたTTバイクがなんとも言えないセレブな休日のアクティビティ感を醸し出している。実際のレースで使われるサポートカーはXFスポーツブレイクで、ルーフの上には7〜8台のスペアバイクが搭載されている。こちらももちろんカッコいい。日本メーカーにとってはワゴンって何?って時代に突入しているけど、シュコダ、VW、アウディ、メルセデス、BMW、ルノー、プジョー、オペルからMINIに至るまで様々なメーカーがサポートカーを提供している。

 

 

スバル、マツダ、三菱も参戦

オーストラリアで行われるダウンアンダーでは、スバルが大会スポンサーを務めていてレヴォーグのオフィシャルカーが先導。さらにUCIの他の大会ではマツダ(MAZDA6スポーツワゴン)や三菱(エクリプスクロス)もサポートカーとして参戦していた。海外市場に軸足を置いている中堅の日本メーカーもUCIのツアーが非常に大きな影響力があるとわかっていてプロモーションの場に使われているのだろうけど、三菱、スバルはともかく、マツダもサポートカーとして機材を積んでしまうとどこか様になっていない。欧州メーカーのデザインに近いとか言われているけど、かなりの違和感を発していてやはり「非欧州車」であることが何と無く伝わってくる。

 

 

 

ジャガーとチーム・スカイは完璧だった

過去3年のWCOTYデザイン賞を連続受賞しているジャガー=ランドローバーのブランド戦略は自動車競技以外の欧州スポーツとの積極的なコラボにあるようだ。日本市場向けにもテニスの錦織圭をイメージキャラクターに設定している(上手くいっているとは言い難いが)。残念ながらUCIツアーで圧倒的な強さを見せた「チーム・スカイ」はスポンサー撤退で2019年から「チーム・イネオス」となったが、エースのクリス=フルームが欠場した2019ツールドフランスでも圧倒的なチーム力で総合1位&2位を独占した。

 

ロードレースは面白い

UCI自転車レースを見ない人にとっては何のことだかさっぱりだと思うが、中継を見ていると選手にぶつかりそうな距離(日本ではありえない!!)で声援を送っていて、欧州においてはサッカーと同じように観客を熱狂させるスポーツなんだということがわかる。人気スポーツであることの理由をいくつか考えてみた。

 

①参加チームが国際色豊かである。

イギリスの「チーム・イネオス」、ドイツの「ボーラ」「チーム・サンウェブ」、フランスの「ラ・モンディアル」、ベルギーの「クイックステップ」「ロット・ソウダル」、オランダの「ユンボ・ヴィスマ」、スペインの「モビスター」、ポーランドの「CCC」、カザフスタンの「アスタナ」、アメリカの「トレック」、オーストラリアの「ミッチェルトン・スコット」。他にもバーレーン、UAE、南アフリカのチームも参戦している。

 

ちょっと失礼な言い方だけど、オリンピックのようなアマチュア色が強い大会ではない。サッカーW杯もグローバルな拡大で競技レベルにおいては少々物足りない試合も増えてきた。より熱狂できるUEFA欧州選手権やUEFAチャンピオンズリーグに近いチーム構成が人気の秘訣だろうか!?欧州を中心とした緩い連帯が「自転車競技」というセレブ的なハードルによって守られている。しかもF1のような敷居の高さではなく、WRCくらいの程よい身近さが心地よく感じるのだろう。

 

 

②「人間性」に溢れている

競走型のスポーツとして、スピード感が絶妙だと思う。150km以上に渡る行程を6時間以上かけて走る様を全編見るのは長尺過ぎる。箱根駅伝と同じようなものだけど、あれは正月でもなければ見る人は少ないだろう。スタートかがゴールまでほぼ同じテンションで走り続ける箱根駅伝と違って、ロードレースの前半戦は集団でゆっくり走っているケースが多い。「全力投入」が当たり前の日本の学校スポーツやプロスポーツから見れば奇異に感じるのだけど、「勝負所」での死力を尽くした争いは、画面越しに「苛烈」さが伝わってくる。

 

サッカーもラグビーも同じだけど、勝負所を探る勝負勘と、チャンスを仕留める技術&センスが勝敗を決める競技は、相撲などの日本の全力投入スポーツとは全く違った面白さがある。勝馬投票券は一切買わないが競馬を見るのはとても好きだ。JRAに参戦してくる外国人のトップジョッキーを見ていると、競馬とは「勝負勘」と「技術&センス」さえあれば、たとえアウェーな戦場であっても能力を十分に発揮して戦えることがわかる。和田竜二というジョッキーを応援しているが、若い頃にG1レースに勝利して日本のトップジョッキーとして長年活躍している彼が、ベテランと呼ばれる年齢になって外国人ジョッキーの「勝負勘」や「技術&センス」を必死で真似している姿はとても共感できる。

 

③サイクリングは身近な運動&コミュニケーションツールとして最適

その気になれば、誰でもピナレロのロードバイクを買い、チーム・スカイのレプリカジャージを着てクリス=フルームに変身して思いっきり走ることができる。フルームのタイムトライアルのように平坦な道で65km/hはちょっと難しいかもしれないが、見通しの良い周囲に誰もいないようなところで50km/hくらいならペダリングで出せる。もうそれだけで気分は高まるし、そのままエグいペースで山岳区間を走破できてしまう!?かのような錯覚すらある。適度な「興奮」と「運動」を手軽に引き出せる身近なスポーツは他にはなかなかないと思う。

 

 

MAZDAのブランディングにどーですか!?

余計なお世話かもしれないが、ブランディングの方法論に迷いが見られるMAZDAにとって「輪行」向けモデルを作ることは、案外手っ取り早い結果を出せるんじゃないだろうか!?実際のところクルマで長時間ドライブした後に、ロードバイクに乗りたい気分にはあまりならない。クルマと自転車のシナジー効果が上がるのは、飛行機での「輪行」のため成田空港などに自転車を人数分積んで運ぶ時じゃないだろうか。利尻島(稚内)や宮古島など高級機材のロードバイクを所有する層は、走るところもこだわる。LCCで松山まで格安で飛んで瀬戸内しまなみ海道などなど・・・。

 

 

日本以外の高所得地域では自転車が増えている

そんな用途にはボルボ(V90)、レクサス(LX)、ポルシェ(カイエン)、アウディ(A6アバント、Q7)などが選ばれているのだろうけど、ここにMAZDAが気の利いた新型モデルを投入すれば、(単なるクルマ好きやミーハー以外の)新しいユーザーを呼び込むことも出来るんじゃないだろうか。40歳過ぎてスポーツ自転車を始める男性は多い。健康管理と趣味が合わさったかなりレベルの高いライフスタイルだと思うし、ロードバイクのメーカーは、台湾、中国、日本、イタリア、アメリカ、フランス、ドイツ、スイス、イギリスだけでなくカナダ、スペインなどでも新しいブランドが誕生している。

 

休日をネットで過ごすのは危ない・・・

高齢社会の先頭を行く日本は、スポーツバイクは無理な高齢者と、スマホにしか興味がない(GAFAに喰われた)若者がひしめく「末期的」な状況で悲観しかないかもしれないが、脱ネット社会を意識してより「人間性」に軸足を下ろした生き方を志向する人も増えているらしい。自動車メーカーもGAFAに取り込まれて自動車向けアプリの開発などではなく、思い切って自転車でも作ってしまってはどうだろうか!?

 

 

MAZDAデザインはどこまで通用する!?

マツダは日本企業のNIPPOが運営する「NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネ」というUCIの2部カテゴリーに当たるUCIプロコンチネンタルチームのサポートカーとして、MAZDA6ワゴンを提供しているが、過去の「チーム・スカイ」などのUCIワールドチームが参加するレースで、他のサポートカーと比べて目立って特別なオーラは出せていなかった・・・。シュコダ、ルノー、VWはともかく、ジャガー、アウディ、ボルボ、BMWはとても様になっている。マツダのデザイナーが本気で取り組んだらどこまでクールなサポートカーができるのだろうか!?・・・なんて想いを抱きつつロードレースを観てます。