マツダのスタンダード(第五世代以降〜) その1「2002 ATENZA(GG)」

GGアテンザ

生産年(2002ー2008)

販売(売れ具合) 国内C 世界A

 

世界を震わせる

マツダが「ZOOM-ZOOM」と言い出した2002年。外国人社長、RX7の終焉、ラインナップの縮小などなど、渦巻くあらゆる懸念を、意味不明(一応意味があることは知っているが)な赤ちゃん言葉でかき消して懸命に前に進もうとする破れかぶれな雰囲気が社内にもあったらしい。新しいマツダの展開に、日本市場では軽い嘲笑の対象くらいでしかなかったかもしれないが、危機的状況に同情的ですらあった世界のファンに対しては、見事なまでの「一発回答」となったのが、グローバルでスマッシュヒットを遂げた2002年発売のMAZDA6(ATENZA)GG型だった。

 

 

当時の日本車はレベル高い

ピュアスポーツカーで世界を駆け抜ける実績を持つ日本メーカーが、アルファ156と3シリーズ(E46)の対峙によって生まれていた「スポーツセダン市場」に純度の高いモデルをドロップしてきた。ショートストローク(2L版)のガソリンNAに、フロント=DWB、リア=マルチリンクは、なかなかエッジの効いた設計なのだけど、当時のマツダにはV6横置きで前後=マルチリンクのフラッグシップサルーン・ミレーニアが鎮座していた上、他の日本メーカーもヒエラルキーで2、3番手になるセダンにはアルテッツァやアコードなど同様にスポーティな設計を与えていたからマツダだけが特別というわけではない。

 

 

遅れてやってきた

このGGアテンザは、まさに「ブランドの起死回生の1台」などとよく言われるが、ミニバンブームが本格化する頃の日本メーカーの設計としてはごくごく常識的な設計ではある。良くも悪くもマツダらしく当時の護送船団トレンドのど真ん中に遅れてやってくるモデルであり、結果的にスポーツセダンブームにおける「最後の花火」としてグローバルでは予想外に大きく打ち上がったようだ。

 

 

 

20年越しの夢が実現

日本市場と、欧州市場では大きく評価が異なるクルマであり、欧州市場の価格ではBMW3シリーズとほとんど価格差などないのだけど、グローバルの販売台数は3シリーズを大きく上回った。このクルマで主査を務め、歴史的大成功となったことからマツダの会長にまで出世したのが金井誠太氏ですが、「マツダ・心を燃やす逆転の経営」でロングインタビューを受けていて「1980年代前半のマツダ車ではドイツ車に全く歯が立たなかったが、その時にドイツ車を超える世界ナンバー1の乗用車を作るという目標ができた」と言っている。

 

 

ビーエムとホンダを超えて!!

初代アテンザ(GG)はつまりそういうクルマだ。小型、中型のフォードグループの基幹アーキテクチャを設計するファクトリー・メーカーとして暗躍し、1998年の初代フォードフォーカスの大成功の原動力となり4代目VWゴルフを奈落の底に突き落とした実績なども自信につながっていたのだろうけど、その年に開発が始まったGGアテンザは、BMW3シリーズとホンダアコードをまとめて潰すために、同じくFFサルーンとして成功したアルファ156とプジョー406を徹底研究して作ったクルマなんだと思う。

 

 

今のMAZDAには超えるべきライバルがいない

ドイツ車に全く歯が立たないと思い知らされてから20年近い雌伏の時があり、その間にバブルを経験し、ピュアスポーツカーを世界へ発信し、フォードのファクトリーとして実働するといったあらゆる意味で幸せな時間を全て吸い込んで作られた・・・必然的な「マツダの会心の一撃」は強烈であった。仕方のないことだけど、今のマツダ車にはそこまで差し迫った「時代性」ってものが備わっていない。過去20年のマツダ車のパラメータ値は、ほぼほぼBMWやフォルクスワーゲン&AUDIを上回る水準なのだから・・・。

 

マツダFRシャシーとトヨタの関係は!?

マツダの社風や気質から思うに、販売が上手いフォードの「開発部門」を地道に統括する立場こそが、自動車メーカーとして非常にハイレベルな仕事ができる環境なのかもしれない。今後のトヨタとの広域な連携に対して、ややネガティブな印象を持ってしまうマツダファンもいるかもしれないが、現状では全く望ましい結果が出せていないクラウンやレクサスLSの開発を担当する部署を、あのトヨタの社長が大ナタを振るって薙ぎ払い、そのままマツダに丸投げなんていう奇抜な展開もあるかもしれない。

 

トヨタグループの切り札!?

グローバルでの仮想ライバルであるアウディはグループの統合再編により上級の縦置きエンジンモデルの開発をポルシェへと移管した。ライバルが老舗のスポーツカーブランドに丸投げするのであれば、トヨタもアライアンス内で最も手練れな老舗スポーツカー・ブランドに白羽の矢を立てるおであれば、それはスバル、BMW、プジョー、ボルボ、ロータスではなくマツダになるだろう。ポルシェと張り合える逸材。

 

世界は「復活」を待っている!?

カイエン、パナメーラ、マカン、そして新たにタイカンが話題を振りまいているけども、神格化されたスポーツカーブランドが乗用車を手がければ、そりゃインパクトは大きい。あっという間に賞味期限切れになったアウディも小型車の市場ではVWよりはインパクトを保つことができている。グローバルで初代アテンザ、初代アクセラ、初代CX-5の爆発力が凄まじかったマツダの神秘的な開発力は、カムリ、カローラ、RAV4が欧州では全く相手にされないトヨタにとっては、自らの市場拡大に有効なアイコンであるし、マツダと欧州&中国市場とのつながりを象徴するGGアテンザのリバイバルを両市場は望んでいると思う。